睡眠時無呼吸症候群 Sleep Apnea Syndrome(スリープ・アプニア・シンドローム)
日本人の約2割がいびきをかいていると言われています。この傾向は年齢とともに高くなり、中高年の男性では 6割、女性ではその 4割がいびきをかいているそうです。そして、このうちの約10%の200万人が寝ている間に何十回も呼吸が止まってしまう睡眠時無呼吸症候群(SAS)だと云われています。
SASとは睡眠中に無呼吸(10秒以上の呼吸停止状態)を断続的に繰り返すことにより、日中の強い眠気などの症状を呈する疾患です。 また、無呼吸が続くことにより高血圧、高脂血症、不整脈、心疾患、脳血管障害、糖尿病などを併発し、生存率の低下を招くことにもなります。そのため早めの治療が重要となるのです。 いびきや無呼吸は、肥満、上気道形態や姿勢等が原因で舌が喉のほうに下がることにより気道が狭められ、呼吸が妨げられることで発生します。その治療法には外科的治療、マスク療法、など種々ありますが、当医院ではスリープスプリント療法を行っています。
正常な状態
仰向けに寝ても気道は十分に開いています。
いびき症
舌が下方に下がり気道を塞いでしまい、息妨げられています。
スリープスプリント装着
舌が引き上げられ気道をひろげるので、息がしやすくなり、いびきをかかなくなります
良質の深い睡眠(熟睡)こそ健康の源です。ところが、いびきをかいているのは眠りが浅い証拠で、その代償として日中の眠気をもたらし、仕事の能率低下や居眠り運転事故を起こすなど、社会生活にさまざまな支障をきたしています。また、長期にわたっていびきをかいていたり、無呼吸が続きますと、高血圧、不整脈、心臓病、脳梗塞などを誘発したり、記憶力や思考力の低下をまねきます。ですから、習慣的にいびきをかいている人は、一刻も早く治療を始めることをおすすめします。 まず、イビキは気道が狭くなった状態で生じ、さらに進んで一時的に閉じてしまうSASとなります。SASでは100%イビキを伴い、 イビキをかく人の1〜2%はSASと言われています。
睡眠時無呼吸症候群とは、一晩7時間の睡眠中に10秒以上の無呼吸が30回以上認められるか、あるいは1時間の睡眠中に10秒以上の無呼吸が5回以上と定義されていますが、無呼吸が通常20〜30秒くらい、ひどい時には1〜2分近く続く人もいるようです。又、7時間の睡眠中30回以上という事ですが、数百回も無呼吸を繰り返す場合もあります。いびきを伴う睡眠時呼吸障害の多くは、仰向けに寝ると重力で舌が下がって上気道の狭窄が一時的な閉鎖の原因で肥満と肥満による舌の肥大も影響しています。起きているときに 10 秒以上息をとめて、これを 30 回以上繰り返してください。かなり大変なはずです。 寝ている時は意識がないのでわかりませんが、体に大きな負担をかけているという訳です。
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睡眠時無呼吸症候群の症状
a. 大きないびきを断続的にかく
b. 日中突然強烈な眠気が襲う
c. 物覚えが悪くなり、記憶力が低下する。イライラしやすくなる。
d. 夜中に何度もトイレに立つ
e. 朝起きた時に頭痛がする
f. 寝ている時に窒息感を感じる。
g. 睡眠中に激しくもがく。
睡眠時無呼吸症候群の治療法
主な医学的治療法には、以下の3つがあげられます。
a. スリ−プスプリント:就寝時にマウスピースを上下の歯牙に装着し、下顎を前方にすることで舌の沈下を防ぐ。
b. マスク療法(径鼻式持続陽圧呼吸装置):CPAP(シーパップ) :マスクを装着し、持続的に空気を送り込むことで、気道の閉塞を防ぐ。
c.外科手術:UPPP :気道をふさぐ原因部位(口蓋垂(のどちんこ)や軟口蓋)を切り取って咽頭腔を広げる手術。
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スリープスプリント療法
寝るときに下の顎を少し前方に突き出させるように工夫したマウスピースを口に入れてお休みになる方法です。この装置を入れることで、のどの気道が広がり、息がスムーズに行えるようになることにより、いびきや無呼吸の症状がなくなります。
2004年より、スリープスプリント(口腔内装置)が健康保険適応(8,000円程)になりました。但し、すべての方に健康保険が適応になると云う訳ではなく、下記の3項目を満たしていることが健康保険適応の条件です。
(1)睡眠検査(終夜睡眠ポリグラフ検査)を行うことが必要です。 終夜睡眠ポリグラフ検査は、当院(も含め歯科医院)では出来ません。 睡眠呼吸クリニックなどの適切な医療機関(呼吸器内科、耳鼻咽頭科)で検査 をしていただきます。
(2)検査の結果、「睡眠時無呼吸症候群」と診断されることが必要です。「いびき症」と診断された場合は、健 康保険適応外ですので自費治療になります。(3〜5万円程)
(3)歯科医師のみの判断では認められません。医師の治療依頼(紹介状)と検査結果を持参してご来院ください。 医師の診断により『閉塞性睡眠時無呼吸症候群』と診断されて、歯科的な治療の必要性があると認められ診療情報提供書により、情報の提供並びにスリープスプリントの作製依頼が行われた時のみ健康保険適応となります。保険診療を希望されない場合や、「睡眠時無呼吸症候群」とは診断されなかった「軽い低呼吸症」や「いびき症」などの場合)はすべて自費になります。
いびき はとっても怖いものです。たかが 「いびき」 とあなどってはいけません。いびき、睡眠時無呼吸症候群には スリープスプリントが有効です 。
スリープスプリントとは スリープスプリントとは、下顎を前方に移動させることで舌を持ち上げ、舌後方の気道径を増大させ呼吸しやすくし、いびきや無呼吸を防ぐためのアクリル製の歯科的口腔内装置(マウスピース)であり、睡眠中に装着して使用します。この装置は歯を固定源にしますので、残存歯の少ない人や歯が動揺している人などは適応外となります。スリープスプリントの利点 2〜3回の来院で作製できます。
簡便で携帯に便利です。 外科的治療のように体を傷つけず、薬物療法のように副作用の心配もないため、ファーストチョイスに最適です。 色々な治療法の中で一番経済的です。下顎を4ミリ位前方へ出した状態で作った 、アクリルレジン製で、受け口の状態で寝るわけで、それにより下顎と舌の沈下が防止され気道が広がり呼吸しやすくなりイビキや睡眠時無呼吸はなくなります。
このスプリントは、大きさもポケットに入る位なので簡単に持ち運びでき、取り扱いも簡単で継続して使用しやすい様です。 舌が下方に下がり気道を塞いでしまい、呼吸が妨げられています。スリープスプリントを入れると 舌が引き上げられ気道をひろげるので、呼吸がしやすくなり、いびきをかかなくなります。 歯を固定源にしますので残っている歯が少ない人(20本未満)にはできません。また、鼻の通りがいつも悪い人や、神経質で寝つきの悪い人にもできません。このような方には別の方法が良いと思われますので、専門病院へご紹介いたします。
スリープスプリント治療の流れ
1回目 口腔内検査 装置は歯に支えを求めるため、虫歯・歯周ポケット検査、欠損状態を調べます。歯の欠損数が多い場合や重度歯周病で歯に動揺を認めるなど、口の中の状態によっては、作成できない場合もありますレントゲン検査歯型とり咬み合わせの状態、歯並びの診断の為と、装置作製の為の歯型をとります
2回目 顎の位置決め、装着装置を口になじませてから顎の位置を決めてから上と下の装置を固定します。 固定する位置は、 効果と副作用を見ながら決定しますので、何回かの通院・調整が必要となる場合があります。
3回目以降 睡眠状態、装置の状態や、口腔内、顎関節の症状などを把握するため定期的に診査、調整させて頂きます。
いびき症
舌が下方に下がり気道を塞いでしまい、息が妨げられています。
スリープスプリント装着で 舌が引き上げられ気道をひろげるので、呼吸がしやすくなり、いびきをかかなくなります。
使用時の取り扱い・注意事項
スプリント使用の違和感
口腔内装置に慣れるまで時間がかかると思いますが、出来るだけはめるようにして下さい。 最初の1週間は朝までの装着は難しいかもしれませんが、2週目からは出来るだけ朝まで装着できるように心がけて下さい。
起床時に歯が浮いた感じがある。顎が痛い 起床時に歯が浮いたような感じがします。通常、5分〜10分位で感じなくなりますが、治らない場合や顎関節に痛みが出た場合は、使用を中止しご連絡下さい。
起床時に装置をはずし奥歯が咬み合わないような顎の違和感が強ければ、朝食前に10回ほど奥でカチカチと咬む練習をして下さい。
口腔ケア
スプリントを装着することによりお口の中の唾液が少なくなります。それにより虫歯や歯周病などになるリスクが高くなります。今まで以上のセルフケアと歯科医院での歯の定期検診や専門的口腔清掃が重要になります。
スプリントの取り扱い
口腔内装置も歯ブラシ等を使用して洗浄して下さい
変形しますのでお湯の使用は避けて下さい 汚れが気になる場合は、義歯用洗浄剤を使用して下さい
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マスク療法
(経鼻的持続陽圧呼吸療法主な治療法の一つにCPAP(シーパップ)(Continuous Positive Airway Pressure、経鼻的持続陽圧呼吸)療法とよばれる睡眠時に簡単な鼻マスクを装着し、小型装置から一定圧力をかけた空気を、のど(気道)に送り込む療法があります。これにより、塞がった気道を拡げ、空気が肺にスムーズに流れ、楽に呼吸が出来るようになります。睡眠中のみに使用するもので、自宅で継続的に行うことが出来ます。CPAPは1998年から健康保険が適用されており、治療を始めた当日から健常者と同様の睡眠がとれる(睡眠の質の改善)など大きな治療効果を発揮します。
CPAP(シーパップ)装置経鼻的持続陽圧呼吸)療法
一般的にこの無呼吸や低呼吸指数(AHI)が1時間に5回以上起こる場合を、睡眠時無呼吸症と定義しています。CPAP治療の保険適応を受けるためには、AHI値が20以上でなければなりません。
無呼吸:口、鼻の気流が10秒以上停止すること。
低呼吸:10秒以上換気量が50%以上低下すること。
無呼吸低呼吸指数(apnea hypopnea index:AHI):1時間あたりの無呼吸と低呼吸を合わせたもの。 耳鼻科、呼吸器内科での治療となります
外科的治療 耳鼻咽喉科的手術
扁桃や口蓋垂(のどちんこ)が大きいなどの原因でSASになっている場合は外科手術をすることでSASが改善されることがあります。 SASの手術に熟練した耳鼻咽喉科医にお願いすることが大切です。イビキやOSASに対する手術的治療として、耳鼻咽喉科で行われている方法はUPPP(uvulopalatopharyngoplasty)とLAUP(laserassisteduvulopalatoplasty)です。 いずれの治療法も上咽頭のスペースを広げると同時に、口蓋垂および軟口蓋下縁が睡眠中に舌根部、中咽頭側壁、後縁に接したり、はさみ込まれたりして気道が閉塞することを防ぐことを目的としています。
UPPPは、弛緩した口蓋垂を含めた軟口蓋下縁を切除し、口腔側粘膜と鼻腔側粘膜を縫い合わせることにより、軟口蓋の緊張がもたらされ、上咽頭腔を広げる手術です。LAUPは、口蓋垂の両側にレーザーで切り込みを入れ、同時に口蓋垂の下半分をレーザーで蒸散するという手術です。これらの手術の有効率は報告者によってかなり異なりますが、イビキに対しては80%前後、睡眠時無呼吸に対しては60%前後とする報告がみられます。
これらの手術の問題点としては、手術しても全く良くならず、 かえって重症になる症例もあり、また術後数カ月経過すると、症状が元に戻ってしまう例が少なくないことがあげられます。また、飲食物を誤嚥しやすくなり、さらには高齢者になると誤嚥性肺炎を起こしやすくなるといった弊害もあります。また、これらの手術は一般に保険適応外になりますので、費用として25〜50万円ほど覚悟しなくてはなりません。閉塞型睡眠時無呼吸症候群に対して主に口蓋垂軟口蓋咽頭形成術(UPPP)という手術が多く行われてきました。
口蓋垂軟口蓋咽頭形成術(UPPP)(uvulopalatopharyngoplasty) 1978年に日本ではじめられた、睡眠時無呼吸症候群の代表的な手術です。口蓋垂を含めた軟口蓋を切除します。次に口側と鼻側の粘膜を縫い合わせ、突っ張るような緊張状態をつくります。 これにより、空気の通り道が確保できます。扁桃肥大があり、軟口蓋が長い人に有効な方法です。無呼吸や低呼吸の回数が50%以上減少するケースは、50%前後となっています改善したものの2〜3年で無呼吸が再発することもあります。 そのため、欧米では睡眠時無呼吸症候群の治療の第1選択とはならず、CPAPによる治療が主流となっています。日本でも1998年にCPAPによる治療が、2004年にスリープスプリントが健康保険適応になったため、現在ではこれらの治療法が多用されています。
口蓋垂軟口蓋咽頭形成術" レーザーによる口蓋垂軟口蓋形成術(LAUP) レーザーで口蓋垂の下半分を切り取ることにより、いびきを改善する方法です。UPPPよりも切除する部分は少なく、手術後の痛みは少なく、出血はほとんどありません。手術に伴う入院の必要なく、20〜30分で終わります。ただし、健康保険適応外のため、治療に多額の費用(20〜30万円)がかかります。 イビキに対する手術法で、SASの治療としては行うべきでないとされています。アメリカ睡眠医学会では、睡眠呼吸障害の治療に LAUPを用いるべきでないとの勧告をおこなっています。日本でも「睡眠時無呼吸症候群の診断と治療のガイドライン」(日本睡眠学会、日本呼吸器学会等後援)で、「手術前後のデータが不十分、SASへの適応は慎重に判断する必要がある」としています。
ラジオ波(高周波)による治療(ラジオ波電気凝固治療 ラジオ波治療器(ソムノプラスティー、コブレーション、セロンなど)利用して、鼻の粘膜をラジオ波で蒸散し、鼻のとおりをよくすることで、症状を改善させます。日帰りの10分程度の痛みの少ない簡単な手術ですが、欠点として1〜2年で症状が元に戻ってしまうことがること、適応症例が限られることが挙げられます。